感性だけでなく、確かなロジックに基づいたスタイリングを提案する──。そんなAOKIの接客を支えているのが、ファッション知識や商品提案力を身に付けた販売員を育成するスタイリスト制度※です。
今回は、同制度の1期生であり、スタイリストインストラクターとして後進の育成にもあたる2人のスペシャリストに、AOKIの接客の真髄を聞きました。浮かび上がったのは、お客様に寄り添いながら、服に袖を通した時の「幸福な体験や有意義な時間」をご提供したいという強い想いでした。
※「AOKIのスタイリスト制度」については、下記をご参照ください。
https://www.aoki-hd.co.jp/stories/what/stylist-system.html
PROFILE
株式会社AOKI
AOKI富山北店 ファッションアドバイザー田辺 良一(たなべ りょういち)
1990年入社(写真左)
株式会社AOKI
AOKI横浜すみれが丘店 ストアマネジャー幕内 一志(まくうち かずゆき)
1994年入社(写真右)
2005年にスタイリスト1期生として認定され、その後ゴールドライセンスを取得。以降、田辺は北陸エリアを中心に、幕内は横浜・川崎エリアを中心に接客とマネジメント業務に従事しながら、スタイリスト教育の推進担当として各地でスタイリストライセンスの認定に携わる。2022年スタイリストインストラクターに就任、現在に至る。
お客様が輝く瞬間に立ち会う──忘れられない接客エピソード
―約30年の販売経験の中で、忘れられない接客エピソードをお聞かせください。
- 田辺:
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今から10年ほど前のことです。入社時はおとなしい印象だった2年目の女性社員が、50代くらいのご夫婦の旦那様に商談用スーツをご提案しました。後日、そのお客様が再来店され、スーツのおかげで数億円規模の商談がまとまったと知らせてくださったのです。
その社員は、「スタイリストは服の提案を通してお客様の人生の喜びに関われる仕事」だと実感し、翌々年に4年目では異例となるゴールドスタイリストライセンスを取得しました。
- 幕内:
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私は、30~40代の息子さんを連れて来店されたお母様に「とにかく息子をかっこよくしてほしい」と依頼され、ジャケットとパンツスタイルのコーディネートをご提案したことがあります。後日、お母様から「息子は女子高の教師で、服装について生徒にからかわれ退職を考えるほど思い悩んでいましたが、勧められた服で出勤したら生徒からかっこいいと褒められ、今では毎日元気に過ごしています。息子を救ってくれて、本当にありがとう」とお電話いただいたことを覚えています。
私たちの仕事には、お客様の人生を変えるようなパワーがある。だからこそ、正しい知識と適確なスタイリング力を磨き上げることが使命であると、喜びを感じるとともに気持ちが引き締まりました。
―お客様との出会いを通じて、ご自身の変化や気づきはありましたか?
- 田辺:
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最初は、ただ「ファッションが好きだから」という理由で仕事をしていましたが、さまざまな経験を通じて次第に「お客様のために」という想いが強くなっていきました。
たとえば、仲間と食事に出かけるシーンで自分の服装に自信を持てると、気持ちが上がります。逆に場違いな服だと、落ち着かない気持ちになる。だからこそ、私たちはファッションのプロとして、シーンやニーズにぴったりなご提案をする。それによってお客様に信頼され、また来店していただけるようになる。そうしたサイクルを得られたことが、大きな変化でした。
- 幕内:
私も元々ファッションがすごく好きで、スタイリングも自己表現の延長でした。しかし、さまざまなお客様から、ご提案したコーディネートが役に立ったというお話や感謝の言葉をいただくなかで、お客様お一人おひとりが輝く提案をすることがスタイリストの本分であると、考えが切り替わりました。そのスタンスがとても心地よく、今、本当に大きなやりがいを感じています。
“AOKIらしい”接客を実現するために
―AOKIのスタイリング提案の真髄とは、何でしょう?
- 幕内:
お客様の魅力を最大限に引き出すことが使命だと考えています。そのために、お客様からTPPOS※をお聞きしたうえで「今のトレンドを程よく採り入れることで、違和感のない自然な装いとなります」といったご提案や「かしこまった場面では、ブラウン系よりネイビー系の方が誠実な印象を与えられます」といったご説明を添えながら、お客様と一緒に最適解を探していく。それこそが、AOKIの接客の付加価値だと思います。
- 田辺:
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つきつめれば服の販売ではなく、「その服を着た時の幸福な体験や有意義な時間の提供」が、AOKIの接客の本質的な価値だと思っています。その実現のためには、知識や技術だけでなく、ヒアリング力、そしてしぐさや表情などのノンバーバル(非言語)情報を読み取る力といったものまでを多角的に磨かなければなりません。さらには、プライベートも含め日頃からさまざまなことに関心を持ち、経験を重ねながら、感性や精神を磨き続けることも重要です。
究極的には、お客様に「こういうものが自分に似合うとは!」という驚きとともに新しい扉を開いていただくことが、最高の喜びです。
※ Time(いつ)、Place(どこで)、Personal(誰と)、Occasion(どんな目的で)、Style(どんなスタイルで)といった諸条件。
―この先、チャレンジしたいことは?
- 田辺:
販売員の提供価値にもっとフォーカスして、外に発信していければなと。AOKIの店舗にお越しいただければ、お目当てのものがあるだけでなく、販売員との対話を通して、想定外のアイテムや新しいスタイリングの提案といった“プラスアルファ”を受け取っていただけます。それは、インターネットで何でも買える時代だからこそ、リアルの場での接客はむしろAOKIの大きな付加価値となっていると確信しています。
- 幕内:
今後も、ファッションへ真摯に向き合い続けたいです。トレンド情報を日々しっかりと掴むのと同時に、トラディショナルな部分はさらに深掘りしていく。ファッションには膨大な要素があるので、知識を貪欲にアップデートし続けていきたいです。
- #ファッション
- #ホスピタリティ